社会制度の話
~60歳からのお金の話~
2013.05.27
新聞等でも取り上げられていますが、今年の4月から「高年齢者雇用安定法」の改正法が施行されました。今後60歳~65歳未満の働く人が増えそうなのですが、賃金をもらっている分、受け取れる年金額が少なくなるケースが考えられるのです。
「高年齢者雇用安定法」は、老齢厚生年金(報酬比例部分)支給開始年齢が段階的に引き上げられことに伴い、年金がもらえない時期ができて「無収入」状態にならないように、希望者が継続して働けるよう施行されました。
※「定年の引き上げ」「定年者の継続雇用」「定年の廃止」のいずれかの措置を行うよう義務付けられました。
しかしながら、継続雇用を希望しても雇用されない、ということもあったので、今回は年金支給開始年齢になるまで、希望者全員の雇用を確実に確保できるように「継続雇用制度の対象者を限定できる仕組み」が廃止される等の改正がされています。
※就業規則に定める退職・解雇事由に該当する場合は、継続雇用しないことが可能です。
※雇用形態がパート・アルバイト等になるなど、労働条件が変更になる可能性もあります。
~60歳以上65歳未満~
65歳未満でお仕事を続けている場合は、総報酬月額相当額に応じて年金の支給額が少なくなったり、支給されない可能性があります。(在職老齢年金制度と言います。)
総報酬月額相当額とは・・
総報酬月額相当額 =「その月の給与(標準報酬額)」+「直近1年間の賞与÷12」
全額支払われるケース
「総報酬月額相当額」(以下「総報酬月額」と記載)と「老齢厚生年金基本月額」(以下「基本月額」と記載)を合わせて28万円以下の場合
少なくなるケースその1
総報酬月額が46万円以下で基本月額が28万円以下の場合
◇減額される金額:(総報酬月額相当額+基本月額‐28万円) ÷ 2
少なくなるケースその2
総報酬月額が46万円以下で基本月額が28万円超の場合
◇減額される金額:総報酬月額相当額 ÷ 2
少なくなるケースその3
総報酬月額が46万円超で基本月額が28万円以下の場合
◇減額される金額:
(46万円 + 基本月額
- 28万円) ÷ 2 + (総報酬月額
- 46万円)
少なくなるケースその4
総報酬月額が46万円超で基本月額が28万円超の場合
◇減額される金額:46万円 ÷ 2 + (総報酬月額 - 46万円)
なお、加給年金がある場合、基本月額の一部でも支給されるときは、加給年金も支給されますが、基本月額が全額停止された時には、加給年金も支給停止されます。
気をつけなくてはいけないのは、「総報酬月額相当額」には「直近1年間の賞与」も影響する、ということです。60歳の定年退職前に多くの賞与を受け取っている場合、減額、もしくは支給停止対象になる可能性がありますので、ご自身で確認しておく必要があると思いますよ。
なお、加給年金がある場合、基本月額の一部でも支給されるときは、加給年金も支給されますが、基本月額が全額停止された時には、加給年金も支給停止されます。
~65歳以上~
全額支給されるケース
総報酬月額相当額(以下「総報酬月額」と記載)と「老齢厚生年金基本月額」(以下「基本月額」と記載)の合計が46万円以下の場合
少なくなるケース
総報酬月額と基本月額の合計が46万円超の場合
◇減額される金額:(総報酬月額 + 基本月額 - 46万円) ÷ 2
※「46万円」については、「支給停止調整額」といい、物価等の変動により見直されます。
※在職老齢年金制度は「老齢厚生年金」から減額されますが、「老齢基礎年金」と「経過的加算」については、全額が支給されます。
現在「46万円」の「支給停止調整額」については、毎年確認する必要がありそうですね。
~その他、給付金を受け取った場合~
その他、様々な給付金を受け取ることで年金が少なくなったり、もらえなくなったりすることがあります。
例えば・・
○65歳になるまで特別支給の老齢厚生年金を受けている方が、失業給付(基本手当)を受けるときには、加給年金を含め全額支給停止されます。
○65歳になるまで特別支給の老齢厚生年金を受けている方が、雇用保険の「高年齢継続給付(高年齢雇用継続基本給付金・高年齢再就職給付金)」を受けると、年金の一部が支給停止されます。
※高年齢継続給付とは:原則として60歳以降の賃金が60歳時点に比べて75%未満の状態で働く場合に支給されるものです。
支給される額
・61%未満:各月の賃金の15%相当額
・61%~75%未満:低下率に応じて各月の賃金の15%相当額まで
このように雇用保険の給付は、年金より優先されるようになっていますので、支給の申請については年金の金額と照らし合わせて考える必要がありますね。